レシチンを界面活性剤として使用した水中液晶薄膜

摘要

液晶は，その発現条件によって，リオトロピック液晶とサーモトロピック液晶に大別される．今日のエレクトロニクス分野において応用されている液晶は，ほとhどがサーモトロピック液晶であり，この液晶は印加電界に対する応答性が高く，様々な電気光学効果が観測され応用されている．一方，リオトロピック液晶は，一般に電界応答性は低く，エレクトロニクス分野での応用例は少ないが，細胞膜の脂質二重層に代表されるように，生体との関係が深く，次世代の液晶応用の可能性が期待され，その基礎物性が盛hに研究されている．液晶は流動性を持つため，その応用にあたってはガラス板間に封入して利用される事が多い．このガラスとの界面が液晶の挙動に与える影響は大きく，ガラス基板の役割は液晶の位置を保持するのみでは無い．事実，ガラス基板に施された配向膜によって液晶の配向が規定されている．そのため液晶と基板との界面に関する基礎研究も盛hに行われており，ガラス基板以外にも空気との界画やラングミュア膜などの液体－空気界面での液晶挙動に関しても研究が行われており，各界面特有の振る舞しが報告されている．本研究では，サーモトロピック，ネマチック液晶の代表的材料であり電気応答性の高い4－シアノ－4'－n－ペンチルビフェニル(5CB)の薄膜を水中に作製し，その電気光学応答性について調べた．水中に存在する液晶膜ではあるが，あくまでもリオトロピック液晶ではなく，サーモトロピック液晶であり，水中で電界応答する機能性液晶として興味深い．