銀イオノフォアとしてのシッフ塩基の合成と分子設計の方向性について

摘要

このような背景のもと、ソフト金属への配位力が硫黄より弱い窒素を配位原子種として採用し、芳香族ケトンとジアミンとの脱水縮合で容易に得られ、しかもジアミンの炭素数を変化させることによって配位原子間の間隔が調整可能なSchiff塩基（図1の(a)，(b)）について先に検討したところ、N,N'－ビス（2'－ヒドロチシイミノ－1'－フェニルプロピリデン）－1,3－プロパンジアミン(PH03; R＝ph, n＝3)およびその誘導体が、優れた銀イオン識別能を発揮するとともにPVC膜電極用の銀イオノフォアとして有望であることが見出された。 本研究では、PH03の銀イオノフォアとしての機能性を向上させ、より実用的な銀イオンセンサへと発展させることを視野に入れながら，銀イオン識別能とホスト分子の化学的性質との関連性を解明してソフト金属識別能を持つ新規ホスト分子の分子設計に必要な基礎的知見を得ることを目的とし、図1に示す計画のもと、イオン選択性に及ぼす(1)窒素原子上への静電的影響（図1の①）、配位原子数の影響（図1の②）および連結部位の置換基の影響（図1の③）について検討を行なった。