蒸熱処理前の加温がミカンコミバエ卵の殺虫効果に与える影響

摘要

蒸熱処理は、飽和蒸気により植物を加熱し植物に寄生する 害虫を殺虫する検疫処理法で、主に熱帯、亜熱帯の生果実に 寄生するミバエの卵や幼虫を殺虫する手段として用いられている。一般的に熱帯.亜熱帯のパパイヤやマンゴゥなどの生果実 は、蒸熱処理等の加熱処理に対して熱障害が少ないとされている力、更に35-40degCで一定時間、熱に曝すと熱耐性を生 じることが知られている（Lurie and Mitcham, 2007)。この ため加熱による検疫処理の前に生果実を加温（以下、「プレ ヒーティング」とレゝう）することで、熱障害を軽減できると 考えられている（Paulletal,1990; Jacobi etal, 1995)。一方、 果実に寄生する害虫も、同温度域で熱耐性が生じることが知 られている（Tang 2007)。クィンスランドミバエで は34-42°Cの温湯浸潢でプレヒーティングすることで同虫 が熱耐性を獲得し、46degCの温湯に対する死亡率が低下するこ とが報告されている（Waddell 2000)。またミカンコ ミバエでは、35degCの高温で幼虫を飼育することで、43degCの温 湯での3齢幼虫の死亡率が20-30degCでの飼育に比べ低下す ることが報告されている（Miyazaki and Dohino, 2000)。