送風によるイネいもち病の防除

摘要

古くから，風がよく吹く地域ではイネいもち病の発生が少ないといわれてきた。 風はいもち病菌分生子（以下胞子）の飛散に大きな影響を与えると報告され（鈴木，1969），薫いもちの発生予察シミュレーションモデルにおいても重要な発病抑制要因となっている（橋本ら，19朗）。 また，いもち病防除に送風を利用した研究として，小区画の畑苗代の商いもち防除に送風処理した報告がある（安達ら，1980）。 田口、百町（2001；2002）は，1999年から2002年に岐阜県の山間地域（標高460m）のいもち病が毎年常発する水田の畦畔に大型送風機を設置して，人為的な送風によるいもち病の防除効果を調べた。 また，送風による微気象や結露への影響，イネ株上からのいもち病菌の胞子の脱落，胞子発芽への影響，抵抗性誘導およびその他の病害虫への効果などについて調べ，風による発病抑制機作を検討した（田口，2000；田口、百町，2001；2002）。 本稿では，これら「風の効果」について得られた知見の一部を紹介したい。