ダイコンへの植物成長調節物質の施与が空洞症の発生に及ぼす影響

摘要

ダイコンの空洞症は根の中心部が空洞化する生理障害で，障害発生根は商品価値が全くない。本障害は根身内部に発生するため，外観で障害の有無を判別することができず，障害根が末端の消費者まで流通する場合がある。空洞症の発生に関する研究については，これまでに播種期，土壌の種類，施肥量，品種間差など，主として栽培面から数多くの研究が行われてきた。しかし，これら多くの研究にもかかわらず，本障害の生理学的な発生機構については検討した研究がなく，このため抜本的な防止対策が確立されていなかった。著者は，1990年頃から約5年間，この障害の発生に関する生理学的な原因究明の研究に取り組み，本障害は生育中期の30°C以上の高地温によって発生が助長されることを，生理的には高温ストレスによって根身内部でサイトカイニン活性が低下して木部柔細胞の分裂活性が低下し，このため生育中期に根中心部に形成された破生間隙の表層細胞で木化が進行，この木化の進行によって間隙内部の細胞形成が阻害され，間隙が空洞へと発達することを明らかにした。