サツマイモにおけるデンプン特性の変異に関する育種学的研究

摘要

サツマイモ（Ipomoea batatas Lam.）は，生産量が世界第7位の食用作物であり，単位面積当たりの乾物生産能力が高く，世界的にも重要なデンプン供給作物である（Woolfe 1992）．また，サツマイモほ中南米原産の栄養繁殖作物であり，同質六倍体で他殖性であることから，イネのような二倍体の自殖性作物に比べて育種を行う上で困難な点が多い．サツマイモは様々な用途別に消費されており，日本におけるサツマイモの用途は，青果用が約50％，デンプン用が約20％を占め，残りはアルコール用，加工食品用などである．しかし，日本におけるサツマイモデンプン生産量ほ，農産物貿易自由化に伴う安価な輸入デンプンの増加等により減少を続けている．これに対し，コスト低下のための対策として高デンプン多収品種の育成が強く要望されている．一方，日本におけるサツマイモデンプンの用途は，水飴、ブドウ糖などの糖化原料が主体で，他にハルサメ，わらびもちなどの食品があるが，その利用範囲は固定化している．サツマイモデンプンの需要拡大のためには新たな用途の開発が必要であるが，そのためにはデンプン特性を質的に改変した品種の開発が重要な鍵となる．そこで，育種によりサツマイモのデンプンを量的、質的に改変するための研究を行い，高デンプン多収品種および新規特性（低温糊化）デンプン品種の育成に結びつけるに至った．本稿ではそれらの研究成果について概説する．