日本周辺海域に出現するマンボウMola molaにみとめられた2つの集団

摘要

フグ目マンボウ科Molidaeはマンボウ属Mola，ヤリマンボウ属Masturus，クサビフグ属Ranzaniaに分類され，世界中の温帯及び熱帯海域に生息する（Nelson，1994）．日本周辺海域にはマンボウMola mola （Linnaeus，1758），ヤリマンボウMasturus lanceolatus（Lienard，1840），クサビフグRanzania laevis（Pennant，1776）の3種が出現するが（波戸岡，2000），漁獲されるものはほぼマンボウM. mola1種に限られる（相良，小澤，2002）．マンボウ科魚類の回遊経路，繁殖生態についてはいまだ謎が多い．クサビフグの幼魚は北緯14度から28度，東経142度から西経147度にかけての中央水域の静止帯で採集されており（Sheman，1961），これを根拠に，北部太平洋ではこの海域にマンボウ科魚類の産卵場が存在するものと推察されており（Parin，1971），実際にクサビフグの産卵場がハワイ諸島で確認されている（松浦，1984）．また，クサビフグ成熟個体が黒潮，カリフォルニア海流そして北赤道海流からなる北太平洋還流の外側移行帯で漁獲されること（Parin，1971），横臥して静かに漂っているマンボウがたびたび目撃されていること（Matsuura and Tyler，1998）から，マンボウ科魚類の回遊経路は海流に大きく依存しているものと考えられている．