光障害を防ぐ －植物は分子構造変化で過剰光エネルギーを捨てる

摘要

高等植物の光合成器官（葉緑体）中で光を集める色素タンパク質は太陽光が強すぎるとエネルギーを熟に変換して光合成系の障害を防ぐことが，クロロフィル蛍光の減少などから推定されてきた。 しかし，この非光化学的消光（non－PhotochemicaI quenching，qE）として知られる現象の分子メカニズムはわからなかった。 最近，光化学系II（PS附の光捕集クロロフィル、畑結合タンパク質（light－harvesting chlorophylla／b－binding protein complexll，LHCll）が，強光下では可逆的に構造変化して過剰な光エネルギーをクロロフィルからカロテノイドにすばやく渡し熟として放出するメカニズムがわかりだした。 最近の論文を中心にして解説する。 まずはqEの説明から（図1）。 葉緑体中のチラコイド膜の上にある光化学系lと光化学系暮tのうち，光化学系Ilでは周辺タンパク質（LHCIIやCP24，CP26，CP29など）上のクロロフィル（C川）で吸収された太陽光のエネルギーは，中心アンテナタンパク質（CP47とCP43）上のCh［，さらに光化学反応を行う反応中心（RC）上のChlに移動し，電子の動きに変えられる。この際，過剰なエネルギーがLHClt上で捨てられるらしい。