高校「生物」における問題点（2）組換えDNA実験の導入をめぐって②－高校教育の立場から－

摘要

ここ10年間で，日本は高校生物教育において世界的な後進国となってしまった．21世紀はバイオの時代だといわれ，ヒトゲノム計画に代表される「遺伝子の時代」ともいわれている．しかし，日本の高校生物教育の中心的教科書である「生物IB」においては，メンデル遺伝に終始し，「遺伝子とはいったい何なのか？」という若者たちの探究心に答える分子遺伝の世界には言及していない．遺伝カウンセラーやインフォームドコンセントが未整備な日本において，いったい誰が遺伝子診断などの情報を伝え教えるのであろうか．また，マスコミなどで大きく報道されているクローン技術などのバイオテクノロジーは，いっさい取り扱うことを禁じられている．さらに，平成14年度からの教育課程では，中学校の教科書から「メンデル遺伝」が消えた．こhなにも，時代の要求と現実の公的教育が食い違っている国は珍しいのではないか．「ゲノム」という言葉は日本の生物の教科書ではまったく扱われていないが，そhな中でこれを朝日新聞などが特集を組み基礎基本から詳しく解説している．新聞が公的教科書の代替えとならざるをえない日本の現状には，むなしささえ感じる．