効果的な国内外来種対策の提言 - 小笠原諸島自然遺産地域を事例に

摘要

世界自然遣産に登録された小笠原諸島は，固有種，固有の生態系を保護するため，すでに侵入した外来種の 駆除を進めるとともに，新たな外来種の侵入拡散防止に取り組hでいる。まず侵入経路を特定し，対策の優先順位を決定し，関係する部門ごとに侵入拡散防止対策を検討し，緊急訓練を実施している。国内外来生物 の移動防止には，さらに制度的な検討が求められる。1.はじめに小笠原諸島は，行政界としては東京 都に属するが，東京竹芝桟橋から南に1,000 km,唯一の交通手段である小笠 原丸に乗って25時間30分かかる離島 である。大陸とも日本列島とも一度も つながつたことのない海洋島*である がゆえに，小笠原諸島の動植物はすべ て，海流や風に乗って運ばれるか，あ るいは鳥に運ばれてたどり着いた動植 物の子孫であり，島の中で独自の進化 を遂げた固有種が多いのが特徴であ る。固有種が多いことに加え，陸生貝 類（カタツムリ類）のように，島ごと にあるいは生息場所ごとに適応して， 多くの生物種に進化する「適応放散」 という生物学的な過程が現在も進行中 であるという理由で，2011年6月，パリで開催された世界遺産委員会にお いて，小笠原諸島は世界自然遺産に登録された。