特異的に性選別精液を人工授精した ブラウンスイス牧場の経営評価

摘要

わが国の酪農経営は、労働生産性の高い 効率的な飼養形態を優先する政策を推し進 めたことから、急速な頭数規模拡大の局面を迎え、一戸あたりの飼養頭数は88.8頭に達し ている（新井肇、1989.農林水産省畜産統計、 2019)。一方で、乳牛の授精に影響を及ぼすと される肥育素牛価格の高騰は、黒毛和種およ び交雑種が高基調で推移しているため、都府 県の多くの酪農経営体は乳用種精液の代わり に、黒毛和種精液の授精による交雑種生産、も しくは受精卵移植による和牛生産を選択して いる（長田ら、2017)。これら経営体の多くは、 後継牛を乳牛の導入により確保してきたが、北 海道の乳牛初妊牛価格は肉用素牛価格に追随して高値で推移しており、2017年には一頭 あたり100万円を超える初妊牛が日常的に取引 されている（図1)。このような状況が加速する ことを憂慮し、自家生産への転換や公共育成 牧場の積極的な利用など、後継牛確保の現状 に警鐘を鳴らしている（小澤ら、2015;長田ら、 2013、2015)。