飼料中のリジン含量と光環境が成長中の ブタの筋肉内脂肪含量とインスリンシグナル 関連遺伝子発現におよぼす影響

摘要

私たちは必須アミノ酸のリジン濃度が低い飼 料（低リジン飼料）を給与するとブタの筋肉内 脂肪含量が高くなることを見出し、すでに何回か報告してきた（Katsumata et al.2005 & 2012; Kobayashi et al. 2012)。この現象をさ らに効率よく発現させるためには、近年さかh に研究されている「時間栄養学（たとえばOda 2015を参照）」の考え方を導入するのがよいと 私は考えている。Bray et al. (2013)によると、明期（飼育室の照明が点灯している時間帯） に限定してマウスに摂食させると、暗期（飼育 室の照明が消灯している時間帯）に限定して 摂食させるよりも飼料摂取量が高くなり、ェネル ギー消費量と脂肪酸の酸化量が低下するという。明期はマウスにとっての休息期なので、この 結果は、休息期に限定して摂食させると体脂 肪量が増加する可能性を示している。さらに、 休息期にあたる暗期に限定してブタに摂食さ せると、体脂肪の蓄積量が高くなることを示唆 する結果も報告されている（van Erp et al.2019)。このように、げっ歯類でもブタでも、休息 期に飼料を摂取させると体脂肪が蓄積しやす くなる可能性がある。このことが筋肉内脂肪の 蓄積にも共通であれば、暗期に限定して低リジ ン飼料をブタに給与すると、筋肉内脂肪の蓄 積をさらに促進できることになる。