国内のホルスタイン集団における 胚死滅および子牛致死をもたらす 遺伝的不良形質のキャリア頻度

摘要

近年ではDNA解析技術が大きく進展し、多 くの遺伝的不良形質（遺伝性疾患）の原因 遺伝子や原因遺伝子と関係のあるマーカーの 特定に至っている。このような特定には、ゲノ ミック評価を目的にSNP (Single Nucleotide Polymorphism ；一塩基多型）検査を実施し た大規模な個体のデータを利用して発見され たものが多く含まれる。VanRadenら（2011)、 Fritzら(2013)およびSchiitzら(2016)は、ホ ルスタインにおいて胚死滅をもたらす5種類のハ プロタイプ（HH1、 HH2、 HH3、 HH4、 HH5) を報告している。これらは、いずれも劣性遺伝 様式の遺伝的不良形質であり、集団中にホモ 接合型で出現しないハプロタイプを調査し発見 されたものである。最近では、胚死滅をもたら す新たなハプロタイプ（HH6)力《フランスの研究 グループより報告されている（Fritzら2018)。 また、2016年には牛コレステロール代謝異常症 (Cholesterol Deficiency ： CD)と呼ばれる 子牛致死性のハプロタイプ（HCD)が発見された (Kippら2016)。 CDは劣性遺伝様式の遺伝 的不良形質であり、出生後の発育不良による低 体重や慢性的な下痢、さらには肺炎や浮腫など の二次疾患の症状を呈し（Kippら2016)、生 後数ケ月以内で死亡する（農林水産省2017)。