福島原発事故と甲状腺疾患

摘要

放射線発がhリスクの理解には，被ばく線量の評価が最も重要である.外部被ばくのみならず，放射性ヨウ素の内部被ばくにより甲状腺発がhリスクが増加する.乳幼児?思春期前後の放射線リスクが高く，年齢増加とともに発がhリスクは下がり，40歳以上では放射線リスクは検出困難である.放射線被ばくによる甲状腺がhは乳頭癌であるが，自然発症との鑑別は困難であり，疫学調査研究が不可欠である.平成23年3月11日の東日本大震災後，福島第1原発の1?4号機において津波被害による全電源が喪失し，結果として水素爆発が続発し，大量の放射性物質が環境中に放出された.その日のうちに原発周囲2 km圏内避難呼びかけ，3 km圏内避難指示，3月11日には半径10 km圏内,3月12日には20 km圏内の住民避難指示が出され，原発作業員と20 km圏内を担当する公的介入者を除き，原発近傍のほとhどの住民が避難した.避難者に対する体表面スクリ—ニングは3月13日から開始されたが，3月15日以降は，スクリーニングレベルの全身除染カットオフ値がGMサ一ベイメ一ターで10万cpmへと引き上げられた.