心房細動と抗凝固療法

摘要

心房細動は年齢とともに頻度が増加する不整脈 であり，高齢化社会を迎えているわが国では，心 不全と同様に今後さらに頻度が増加することが予 想されている.心不全患者では心房細動の合併率 が高ぐ日本の登録研究では，心不全患者の30? 40%程度に心房細動が合併していると報告されて いる. 心不全を呈すると心房に圧負荷が掛かり，心房 筋や肺静脈を伸展させ，心房筋の線維化を促進す ることが，心房細動の発症?維持を引き起こすと考 えられている.また，心房細動自体も心房収縮の消 失ゃ頻脈?脈の不整が心拍出量の減少を引き起こ し，心不全を惹起させることになる. 心不全と心房細動はお互いの病態を悪化させ， 負の連鎖を形成しており，New York Heart Association (NYHA) 分類での心不全の重症度に応 じて心房細動の合併率が上昇すると報告されてい る（図1)".したがって心不全診療においては，同 時に心房細動に対する治療を熟知することが重要 と考えられ，本稿では心不全合併心房細動患者に おける抗凝固療法について述べる.