血中循環腫瘍DNA

摘要

血液中には細胞死によつて細胞から放出された遊離DNA (cell-free DNA, cfDNA)が存在するが， 血中循環腫瘍DNA (circulating tumor DNA, ctDNA) はその中で癌細胞由来のDNAである。ctDNAは 1990年代に発見されており，一部の研究者の間で 臨床応用の可能性が追求されていたが，脚光を浴 びだしたのは最近のことである。他の癌のバイォ マーカーと異なり癌関聯遺伝子の変異を指標にし て検出するため，理論的には特異度が遥かに高い。 生検材料を使つた遺伝子検査を血液で代替すると いうliquid biopsy"というコンセプトのもと重要な 癌研究分野になりつつある。また，妊婦のcfDNA を用いた新型トリソミ一診断法が次世代シーケンサ一の代表的な臨床応用成功例であることから， ゲノム科学の分野でも注目を集めている。ただィルミナ社ゃネーチヤ一誌などの商業的キャンべ一 ンが先行している向きもあるため本稿では現状を 紹介したい。