移植神経側面を活用するループ型神経移植を用いた顔面神経再建：術式開発と臨床応用

摘要

緒言:耳下腺悪性腫瘍切除後に代表される顔面神経の広範な欠損では一本の本幹から多数の分枝を再建する必要があり、手技的難易度が高くなる。我々はより容易な手技、より高効率の再建を目的として移植神経の側面を積極的に活用したループ型神経移植による再建を行った症例を2004年に初めて報告した[1]。現在に至るまでの本術式に関する動物モデルによる検証ならびに術式の発展、臨床成績につき述べる。2004年に我々がはじめて報告した顔面神経全欠損に対する移植神経側面の積極的活用ならびに端側神経縫合を組み合わせた術式[1](ループ型神経移植原法、以下術式①）（図1)における神経再生のメカニズムについて基礎的検討を行った。ラツト坐骨神経を用いた2枝再建モデル[2]、並びにラツ卜顔面神経を用いた4枝モデル[3]について神経トレーサーによる解析、組織学的?電気生理学的検証を行い、術式の有用性を確認した。これら動物モデルによる検証では本幹からの再生軸索は移植神経からその側面に縫合された末梢側の各枝に「分配」されて（axonal distribution)おり、移植神経そのものの側面も神経縫合部位として使用可能であることが明らかとなった。移植神経側面を積極的に活用することにより、顔面神経の多数枝の再建をより少量の移植神経で簡便かつ効率良く行うことが可能である。