胆管結石截石における内視鏡的乳頭バルーン拡張術と内視鏡的乳頭括約筋切開術の比較

摘要

ERCPは胆管結石の裁石に広く用いられている.本研究の目的は結石除去における内視鏡的Oddi括約筋バル-ン拡張術の短期成績を乳頭括約筋切開術と比較することである.臨床および学究的な実践において117例をバルーン拡張術に,120例を括約筋切開術に割り付け無作為多施設試験を実施した.患者背景,手技,内視鏡医に関しては,バルーン拡張群で年齢が若い以外2群間で同様であった.手技の成功率はバルーン拡張群,EST群おのおの97.4%,92.5%であった.偶発症は各群17.9%,3.3%で発症した(p<0.001;Odds比14.6,95%信頼区間7-22.3).2例の死亡を含め重篤な偶発症がバル-ン拡張群で6.8%にみられたのに対し,EST群では1例もみられなかった(p<0.004;Odds比6,8:95%信板区間2.3-11.4).両群でみられた偶発症の内訳は,膵炎15.4%,0.8%(p<0.001,Odds比14.6,95%信頼区間7.8-21.3),胆嚢管瘻孔1.7%,0%,胆管炎0.9%,0.8%,十二指腸穿孔0%,0.8%,胆嚢炎0%,0.8%であった.バルーン拡張群に2例(1.7%)の膵炎による死亡例がみられたが,EST群にはみられなかった.研究は第1回目の中間解析で終了とされた.バルーン拡張群でより高度の治療手技を要し,入院期間も長く,通常の活動に復帰するのにより多くの時間を要した.様々な患者,実践の中で,胆管結石除去を目的とした内視鏡的バルーン拡張術はESTよりも高頻度に偶発症を伴い,膵炎による死亡もみられる.したがって,截石を目的としたOddi括約筋のバノレーン拡張術は日常診療の中では避けるべきである.