(PS174)電子線後方散乱回折およびビッカース硬度測定による微細粒オーステナイト系ステンレス鋼の組織·変形機構解析

摘要

金属材料の結晶粒径と降伏応力や引張強さの関係としてHall-Petch 則が経験的によく知られている．これは結晶粒の微細化に伴い材料強度が向上するというものであり，この機構を利用し材料強化を目的として生み出された金属を微細粒金属材料と呼ぶ．世の中で実用されているものの一つとして微細粒オーステナイト系ステンレス鋼(微細粒SUS304)が挙げられる．しかしながらSUS304 はシェフラーの組織図から見てもオーステナイト相(γ 相)とマルテンサイト相の(α’相)の境界領域の準安定状態にあり，γ→α’への加工誘起変態が生じることが知られている．従って本合金では結晶粒微細化と相変態の両方が材料強度に関係する．そこで本研究では平均結晶粒径が異なる二つの微細粒SUS304 とその通常の市販材に対して引張変形を加え，α’相変態量の初期粒径依存性，集合組織変化から結晶粒の微細化が材料の機械的特性に及ぼす影響を明らかすることを目的とした．