(S195)熱分析および熱膨張測定による高炭素マルテンサイト鋼の焼戻し過程の解析

摘要

中高炭素のマルテンサイト鋼は強度と延性?靭性を両立するために適切な焼戻し処理を行って使用されるため、焼戻しによるマルテンサイトの組織変化?機械特性変化については多くの研究報告がある。しかし、鋼中に混在する残留オーステナイト（γ）の焼戻し時の組織変化についての研究例は少ない。筆者らは、焼戻しマルテンサイト中の残留 γ の消失温度が Si 添加により高温シフトする現象と、Si 添加によるセメンタイト析出抑制との関係に着目し、セメンタイト析出による静水圧緩和が残留 γ消失の原因であるとの仮説を立てて検証を進めている 1)。本研究は上記仮説の検証実験であり、熱分析と熱膨張測定を併用することで、連続加熱中の鋼材のセメンタイト析出と残留 γ消失挙動を解析した。