腐食性水膜形成に着目した屋外大気環境における鉄鋼材料の耐食性評価と寿命予測技術の開発

摘要

腐食現象において、材料と水溶液の接触状態は極めて重要であり、(1)完全浸漬、(2)半浸漬、(3)浸漬と乾燥の繰り返しに大別される。(1)(2)は、その再現が比較的容易であるが、(3)では濡れ乾きの状態を時々刻々変化させる必要があり、どのようなパターンを使用すべきか判断に迷うことが多い。大気腐食は、その典型例である。屋外では材料表面の濡れ乾きの状態が、昼と夜で変化することに加え、地域や季節ごとにその状況が異なるという不確定要因が存在し、極めて複雑である。そのため、大気腐食は「さび」という点では、我々にとって身近な現象でありながら未解明の部分が多く、現在でも材料開発や選定において、大気暴露試験のデータがより所とされている。しかし、大気暴露試験は結果を得るまでに長い年月と労力を必要とするため、これに代わる促進評価技術の開発や寿命評価法の研究が進められている。ここでは、ステンレス鋼に関し著者らが行ってきた研究を中心に、環境と材料の両側面から鉄鋼材料の大気腐食評価および寿命予測技術について述べる。