鍛造用バナジウム添加鋼の降伏強度に対する高温保持時間依存性

摘要

近年，地球環境問題に対する関心はますます高くなっている．国内CO_2排出量の約20%を占める自動 車等の運輸部門では，CO2排出量の削減を目的とした部材の高強度化による車体軽量化への取り組みが 強化されている． 一方，部材全体の高強度化は被削性等の加工性が悪化するため，高強度と加工性の両立が不可欠であ る．そのため，単一部材に従来よりも高い強度を持つ部分と，加工性の良い部分を持たせるといった傾 斜機能を付与する新たな加工技術が求められる． NEDO が主導となっている先進的制御鍛造技術の基盤開発プロジェクトでは，鍛造部品での加工熱処 理技術を応用し，バナジウムの析出制御を活用した傾斜機能付与の実現を目標にしている． 鍛造後冷却?保持中に析出するV(C,N)は基地へ微細に分散し，著しく強度を向上させることが知られ ている．しかし，その後の高温?長時間の保持によって析出物が粗大化し，その析出強化量が低下する ことから，温度と保持時間の影響を調査することは非常に重要である． そこで本研究では，鍛造用として用いられる中炭素鋼（S45C）にバナジウム（V）添加した鋼材を用 い，高温での保持時間が降伏強度に与える影響について調査した