モールドフラックス内の伝熱に関与する熱物性値

摘要

鋼の生産性の向上およびプロセスの省エネルギー化のため，連続鋳造の高速化が求められている。単純に 鋼の引き抜き速度を大きくすると，溶鋼は急冷され，鋼の不均一凝固に起因する縦割れが鋳片表面に生じる ことになる。このような事態を避けるためには，溶鋼から鋳型への熱伝達を制御し，溶鋼を緩冷却しなけれ ばならない。溶鋼から鋳型への熱伝達制御を精密に行うには，連続鋳造におけるプロセスシュミレーション が必要不可欠であり，その入力データとして種々の熱物性値が必要となる。鋼からの熱伝達機構は主に，輻 射伝熱と伝導伝熱であり，鋳片/鋳型間にはモールドフラックスが存在するため，輻射伝熱のシミュレーショ ンには，鋼の放射率ならびにモールドフラックスの光学物性値が，また，伝導伝熱のシミュレーションには， モールドフラックスの熱伝導度が必要となる。このような背景のもと，当研究グループでは，溶融鉄および 溶融鉄-炭素系合金の垂直分光放射率の波長および温度依存性，実用モールドフラックスの熱伝導度，透過率 および反射率を測定してきた。今回は，今まで蓄積してきたデータとその関連性について紹介する。