歯科?口腔疾患:歯周病

摘要

歯周病は歯の喪失の主要因の一つである.1989年，当時の厚生省が「日本人の平均寿命である80歳で20本の歯を残す」という8020運動を提唱して以降，さまざまな取り組みが行われた結果，運動開始当初は達成率7%程度(平均残存歯数4?5本)であったのが，2017年に厚生労働省が発表した歯科疾患実態調査(2016年調査)では51.2%と半数以上の達成率を示している.残存歯数の多い高齢者の増加は，同時に，歯周病罹患率の増大(図1)および感染リスクを多く抱えた高齢者が増加していることを意味する.歯周病は糖尿病の6番目の合併症ともいわれており，重症化した歯周病に伴う慢性炎症が糖尿病の病態に悪影響を及ぼすことが明らかになりつつある.歯周病は口腔機能の低下をまねき，摂取栄養素の偏りにもつながり得ることから，糖尿病患者における適切な歯周管理は栄養管理という観点からも重要である.また，特に後期高齢者における口腔機能の低下は低栄養の要因にもなる.本稿では，高齢者における歯周病の病態，糖尿病と歯周病の関連性，高齢者の歯周治療および口腔管理とその意義について概説する.