窒化処理したダイカスト金型の劣化診断

摘要

ダイカスト金型（以下、金型）の操業過程に発生するヒートチェックや溶損などの欠陥に対し、製造現場の管理は製品および金型の目視による外観検査や形状変化で行うことが多い。よって、製品の品質限界まで到達した金型には、表面に大きな物理的欠陥が存在するため、補修時に多くの費用や時間が費やきれている。 したがって、金型損傷の定量化が可能となると、損傷の発生前もしくは初期段階での補修が可能になるため、費用や時間の削減が期待できる。 一方、生産管理を行うつ場合、金型寿命やメンテナンス時期設定は経験や勘への依存度が高い。 しかし、熟練者の高齢化や海外製造拠点の技能者不足を考慮すると、金型損傷の定量化は近い将来、重要な課題になるものと考えられる。 これらの背景から、本稿では金型表面の劣化を定量的に把握することを目的に、渦電流による劣化診断装置の開発を行った。 対象とするのは、操業過程の熱影響で電磁気的な物性値が大きく変化する窒化処理を施した金型である。 前報に続き、本稿では、まず試作装置を製作し、2種類の窒化処理を施した試験片を用いて熱疲労試験を行った。 次に、実際の金型を用いた実証試験を行ったので、その結果について報告する。