任意部位の光透過性を向上させた木材の製造

摘要

COP21においてパリ協定が合意され，人類の持続的な発展には，気候変動抑制を考慮に入れなければいけないことが既に通説となった．もはや地球温暖化は，資源の枯渴よりも早く，人類を脅かす問題である．地球温暖化の主要因として，化石燃料の利用による二酸化炭素排出が指摘されている．こういった背景を基に，二酸化炭素を吸収·利用する光合成により得られ，かつ，地球上のバイオマスの9割を超える量の蓄積がある樹木が，注目を集めている．樹木は地球上におよそ3兆本存在し，さらに1兆2000億本を植樹する場所が世界中に存在する．仮にこの本数の樹木が植えられると，光合成による年間の二酸化炭素固定化量は，現在必要とされる排出抑制量を大幅に上回る．また，枯死·分解（結果，二酸化炭素の放出）することなく適切に樹木を伐採·材料としての利用を行うことにより，その固定量を最大化させることも可能であろう．木材·木質材料の利用の間は二酸化炭素を固定化することができるため，積極的なその利用は今後ますます重要となる．本解説では，木材利用拡大が期待される新たな加工法として，「任意部位の光透過性を向上させた木材の製造」方法について紹介するが，その前に，読者にとってあまり馴染みがないであろう木材についての諸知見について，さらに，木材の成形加工についての概説もそれぞれ行いたい．