中国での事業展開と貿易保険の役割

摘要

日本貿易保険，通称「NEXI」（Nippon Export & Investment Insurance：ネクシイ）と聞いて，どのような組織でどのような事業を行っているか，すぐ分かる方は多くないと思う。 NEXIは，わが国企業の輸出や海外での事業展開を巡る環境の変化に応じて，わが国企業が直面するリスク（戦争などから輸入者の支払い不能まで）を積極的にカバーするため，2000年4月に経済産業省の組織を分割して，設立された。 そもそも日本の貿易保険制度は，輸出振興を目的として1950年に発足し，その後50年にわたり，通商産業省の直轄事業として運営されてきた。しかし，最近では戦争，収用などの典型的な非常リスクは減少する一方，IMFなどの国際金融機関と対外債務を抱えている発展途上国政府との取り決めにより，例えば国営電力公社の発電所建設事業などに対し，当該政府が輸入代金の支払いを保証することがまれになってきたことから，輸入者や事業の実施者の輸入代金の不払いや融資の未返済のリスクが大きな問題となってきている。 このような環境を踏まえ，貿易保険の引き受けを積極的に行っていくには，貿易保険の対象となる事業の抱えるリスクや資金繰りの分析のための専門知識がますます必要となる。 このため，貿易保険担当部局を経済産業省から切り離し，職員の身分も公務員から非公務員に変え，NEXIという新しい組織とした。