ロシアとウクライナのガス紛争ともに失墜した欧州諸国からの信用

摘要

2009年1月1日を出発点に、「恒例？ 」ともいえるロシアとウクライナとの天然ガス販売価格を巡る紛争が勃発した。 すでに、2006年1月1日にもロシアからウクライナに販売する天然ガス価格の折り合いがつかず、ロシアがウクライナ向けの天然ガス供給を停止したため、厳冬に見舞われていた欧州諸国に暖房用のエネルギー危機をもたらし、ロシア産の天然ガスに過大に依存するリスクを欧州諸国は痛切に肌で感じ取っていた。 欧州諸国で消費する天然ガスの25％はロシア産天然ガスであり、そのうちの8割、すなわち欧州諸国の天然ガス消費の20％はウクライナ経由のパイプラインによって輸入されている。 そのため、これからもロシアとウクライナが天然ガスの輸出価格交渉で紛糾するたびに、ロシアがウクライナへの天然ガス供給を停止し、ウクライナを経由した天然ガスが欧州諸国に供給されなくなるというエネルギー安全保障上の大きなリスクを抱えることとなった。 欧州諸国は日本と比較して、国内に油田、ガス田、炭田を持っていることから、一般的にエネルギー自給率は日本よりもはるかに高い。 英国などに至っては、北海油田を持っていることから、エネルギー純輸出国である。 フランスも原子力立国を目指し、エネルギー自給率は日本とは比べ物にならないほど高い。 しかし、2006年1月1日に続く、2009年1月1日のロシアによるウクライナ向け天然ガス供給停止によって、欧州諸国のエネルギー需給構造の意外な脆弱さが露呈した形となったことは否定できない。 とくに、ロシア産天然ガスの依存度が高い、ハンガリー、ブルガリア、スロバキアをはじめとした東欧諸国は、家庭の暖房用燃料にも不足し、凍死者きでるような緊急事熊となった。