Ⅱ.食道癌の術前遺伝子診断と治療選択

摘要

術前遺伝子診断により得る情報としては,基本的には病巣の広がりと原発巣が有する癌の臨床特性がある.癌病巣の広がりには局所的なものと全身的なものがあるが,局所的な情報を得るためには内視鏡による生検が,全身的な情報を得るためには血液中癌細胞の同定が行われており,そのマーカーとしてはテロメラーゼ活性, SCC抗原やサイトケラチンmRNAなどを用いている.血液中で癌細胞が検出される症例では,たとえ早期の癌であっても血行性転移が多く全身疾患と考えて集学的治療を必要とする.内視鏡生検による原発巣の検討では, c-erb Bやp16に異常がある症例ではリンパ節転移が多く,異常のない症例に比較し広いリンパ節郭清が必要となる.一方,cyclin D1増幅症例では血行性転移が多く,早期の癌であっても集学的治療を必要とする.