アレルギー性疾患に伴う中枢神経障害

摘要

アレルギー性疾患に伴う神経障害としては，多発性単神経炎を呈するChurg-Strauss症候群が有名である．本症はアトピー型気管支喘息の後に全身性血管炎の一環として多発性単神経炎を呈する．本症では，まれに脳出血や脳梗塞を合併する以外には中枢神経障害を呈することはなく，脊髄炎を発症したとの報告はない．一般的にアレルギー性疾患に伴って中枢神経に炎症を生ずるという考え方はなかった．ただ，小児では極めてまれに気管支喘息の発作後にポリオ様の弛緩性麻痺を呈することがあり，Hopkins症候群と呼ばれていた．しかし，少なくとも成人ではアレルギー性疾患に伴って中枢神経障害が起こるとは全く考えられていなかった．ところが，我々はアトピー性皮膚炎に伴い特異な病像を示す脊髄炎を発症する例があることを見出し，アトピー性脊髄炎（atopic myelitis）との病名を提唱している．これを契機にアレルーと中枢神経の器質的障害の関連を示す知見が次第に蓄積されつつある．本講演では，このようなアレルギーに伴う中枢神経障害に力点をおいて臨床研究の現況を概説する．