急性期脳血管障害の治療戦略Brain Attack時代のプロローグ初めての脳卒中治療ガイドラインにおける急性期治療の要旨と問題点

摘要

本邦には，1960年代の文部省綜合研究班による研究をはじめとした脳卒中の診療ガイドライン（GL）がいくつかある．しかし，いずれも脳卒中の分類と診断基準を主体としたものであり，治療に関する正式な指針は存在しなかった．一方，米国では1994年，英国でも2000年からevidence-based medicine（EBM）を重視した詳細な脳卒中診療GLが策定された．しかし，これらの欧米のGLにはわが国の実情とかけ離れた点も多い．本邦と欧米には，人種差のみならず承認治療薬，脳卒中の病型の頻度などの相違があり，欧米GLをそのまま当てはめることはできない．従って単なる欧米GLの邦訳ではなく，わが国の詳細かつ豊富なエビデンスや実情も考慮した学会主体の独自のGL策定が急務であった．更にGLを作ることでわが国に如何に十分なエビデンスが乏しいか，ベストエビデンスは何かがわかり，臨床研究の目標も明確になることが期待された．