日本人の宗教観と生殖医療

摘要

自分の血や遺伝子を分けた子どもを持ちたいと いう願いは，たとえどれほど切実なものであって も，これをかなえることが倫理的であるとは限ら ない.個人倫理にのみ立脚すれば，そのような願 いをかなえることは医療者にとっては善行となる が，この願望が他者を危険に晒したリ不利な立場 におきかねない場合は，それをかなえることが社 会倫理上では悪ともなリうる.基軸をどこにおく かで評価が分かれるのが倫理問題の特徴である が，このとき倫理的判断の基準を提供するひとつ の根拠が宗教である.どの宗教的基盤に依って立 つかによって，倫理的判断も変わってくる.それ は，宗教が教理的根拠を持って倫理的判断の元と なる価値観を提供するからである.