植物成分による癌の化学予防

摘要

酸化ストレスの過剰発現は，癌をはじめ老化に関連した疾病の原因となると考えられている．著者らは，多種多様な抗酸化試験法を用いて数多くの植物成分の検索を進めてきたが，色素，とくに，植物性ポリフェノール色素による癌予防の可能性に注目して研究を進めている．いままでに単離 精製に成功した植物性ポリフェノール色素は，大きく分けて，①ハーブやスパイス，野生種に属する有色植物種子など，植物本来のもっているポリフェノール色素と，②食品の加工 調理中に二次的に生成するポリフェノール色素に大別される．前者に属し，最近注目を集めているクルクミンは，生体内でテトラヒドロクルクミンに変換され，生理機能を示し，アントシアニンとして注目を集めているシアニジン-3－O－β－D－グルコシドも，生体内で吸収 代謝されて機能性を発揮することが明らかにされた．また，発酵により紅茶の赤色色素，テアフラビンやカカオポリフェノールが二次的に生成する．本稿では植物成分，とくに，最近注目が集められている"ポリフェノール色素に焦点をあて，癌予防食晶開発のための基盤的研究の現状と動向を紹介したい．