レチノイドによる癌の化学予防 レチノイドを用いた発癌予防の基礎と臨床：肝癌を例として

摘要

レチノイドとはビタミンA誘導体の総称であるが，現在では核に存在するレチノイド受容体にリガンドとして結合し，標的遺伝子の転写を制御する物質と理解されている．この様式でレチノイドの制御下にある機能には細胞分化やアポトーシスが含まれる．また，化学予防は"前癌細胞を生理的な機序を用いて停止あるいは逆戻りさせ，その結果,発癌の進展を予防するこど，と定義される．そのもっとも有力な作用機序は核受容体（レチノイド受容体を含む）を介して細胞の増殖 分化を制御し，最終的には前癌細胞のアポトシスを誘導してそのクローンを除去するというものである．各種癌腫について臨床的に検討が進行中であるが，とくに子宮頸癌，頭頚部癌,肝癌のレチノイドによる二次予防は臨床的実用化が近い．