糖尿病合併症の疫学一わが国の2型糖尿病患者データを中心に

摘要

多因子遺伝と生活習慣の両者が深く関与する2型糖尿病の合併症は，人種の影響を強く受けるため欧米の疫 学データを流用することはできず，わが国独自のェビデンス構築が必要である.近年わが国でも，Japan Diabetes Complications Study(JDCS)をはじめとする前向き研究から，日本人患者の合併症や治療の実態に関す るェビデンスが築かれつつある.それらの結果，糖尿病合併症と血糖，血圧，脂質コントロールとの強い関連 が認められたほか，腎症における喫煙や，網膜症における果物，動脈硬化合併症における食物繊維や食塩など 食事関連因子の関与や，運動療法を十分行つていた患者において脳卒中や死亡率が半減していたことなど，生 活習慣の重要性が明らかにされている.さらに個別患者における合併症発症率の予測も可能になつており，疫 学データが糖尿病診療の具体化や個別化に貢献できる時代になつてきた.