分岐鎖アミノ酸による予後改善と肝発癌予防-肥満を合併した肝硬変

摘要

肝は栄養代謝の中心であり，慢性肝疾患の終末像である肝硬変ではさまざまな栄養代謝障害が生じている.分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤は慢性肝疾患に伴う蛋白質?エネルギー低栄養状態を改善するが，2005年に報 告された大規模臨床試験(LOTUS試験）において，同剤の補充療法が非代償性肝硬変患者の予後やQ0Lを改 善することが明らかになった.また，肥満や糖尿病，インスリン抵抗性は肝発癌の危険因子であるが，BCAA 製剤は肥満を合併した非代償性肝硬変患者の肝発癌を有意に抑制した.BCAAによる肥満関連肝発癌抑制機 序のひとつとして，インスリン抵抗性の改善作用が考えられる.肝硬変患者の栄養状態や肝不全に伴う諸症状 を改善するのみならず，近年増加傾向にある肥満や糖尿病を合併した肝硬変患者の発癌を抑制するBCAAは， 慢性肝疾患患者の予後改善を目指す上で重要な薬剤である.