慢性心不全患者における睡眠呼吸障害と酸素療法

摘要

慢性心不全患者の予後は，ACE阻害薬やARB，beta遮断薬などの薬物治療の導入で大きく改善してきた．しかし，薬物治療だけでは十分コントロールのつかない難治性の心不全患者が少なからずいるのも事実である．睡眠時無呼吸症候群は，2003年の新幹線居眠り運転事故以来脚光を浴びる疾患となったが，以前から心不全患者に多く合併していると報告されていた．とくにチェーン?ストークス呼吸や中枢性の睡眠呼吸障害のある心不全患老の予後が悪いとされている．2005年4月からわが国においてこれら中枢性睡眠障害のある心不全患者に夜間在宅酸素療法が保険適応となり，慢性心不全の治療法の一つとして，公的にも認められた．睡眠呼吸障害が心不全に与える影響について，まだ未確立な部分も多いが，本稿ではこれまで解明されている病態や治療法についてエビデンスに基づき検証してみたい．