膵頭十二指腸切除時の上腸間膜静脈?門脈損傷の対処法

摘要

膵頭十二指腸切除術の適応疾患は，主に膵頭部領域 の腫瘍である.門脈?上腸間膜静脈を剝離せずに膵頭 十二指腸切除術はありえない.膵頭部周囲には非常に 多くの血管があり，一度損傷すると大出血につながる ため，血管系の解剖学的位置関係を十分に認識してお く必要がある.門脈を温存できるカゝ，あるいは切除し なければならないかを術前から正確にプランニングす ることも重要なポイントである.そのためには各種画像診断，特にMDCTによる癌の進展度診断や動脈 系?門脈系の血管系の解剖を再確認しなければならな い.もちろh，正しい手技，広い手術野の展開を行い， 手術中の無理な操作は避け，愛護的かつ丁寧な基本的 な手術操作を行っていても思わぬ出血に見舞われるこ とがある.そのときに冷静沈着に対処できる能力は， 外科医として極めて重要な要素である.本稿では，門 脈系からの出血を中心に説明する.