肝内側区域切除時の左胆管損傷

摘要

肝内側区域切除術においては，肝門から左肝管にかけてのグリソン鞘の損傷を避けるために注意深い剥離操作を 要する.左肝内胆管には様々な走行異常が存在するため，術前に胆管走行や門脈との位置関係を把握することが重要である. 令胆管損傷に伴う胆汁癭は，その成因と部位を正確に診断し，離断型胆汁癢に対してはエタノール焼灼などの処置 を行う.肝胆膵外科手術における胆管損傷は比較的頻度の高 い合併症であり，肝切除後の胆汁瘻などの胆道系合併症の頻度は4.0?8.1%と報告されているば.肝切除術 は潜在的に胆管損傷の危険性があり，術前の正確な解 剖学的脈管走行の把握と，術中の注意深い剝離操作に より胆管損傷を予防することが必要である.肝内側区 域切除術では，肝門部付近の左胆管が切離面に近接し ているため，この部位の胆管損傷に注意を要する.そ の際，左胆管はその分岐形態が多岐にわたるため，術 前のmultidetector CT (MDCT)画像などにより胆管 走行や門脈との位置関係を把握するとともに，術中の 注意深い観察が重要である.