脂質異常症の治療:生活習慣の指導法

摘要

生活習慣指導は，脂質異常症の治療の基本であることは論を侯たない。脂質異常症を指摘された全ての患者に対して，まず食事療法や運動療法，禁煙の指導を行うことが必要となる。冠動脈疾患を発症した二次予防患者や，家族性高コレステロール血症などの例外を除き，多くの患者においては生活習慣指導で効果が不十分な場合にのみ薬物療法の開始を考慮すべきである.薬物療法が開始となった後でも，生活習慣指導は継続し，最小限の投薬で良好なコントロールが得られるようにすることも重要である。脂質異常症の患者では，肥満や糖尿病，メタボリックシンドロームを合併している場合も多い。食事?運動療法は，単に血清脂質を改善させるだけでなく，肥満の改善によりインスリン抵抗性を改善させて糖尿病の発症を予防したり,血圧を降下させたりするなどの効果があり，そうした面からも心血管疾患の発症を予防する効果がある。生活習慣指導は，医師，看護師，管理栄養士,理学療法士など，多職種によるチーム医療で行うのが原則である。しかし，診察室において，例え短時間であっても，主治医自らが具体的なアドバイスを行うことで，患者の動機づけにつながることも多い。