肥満と慢性炎症一脂肪組織における免疫細胞の役割一

摘要

はじめに:肥満は，メタボリックシンドロームや2型糖尿病，心血管疾患など様々な代謝疾患の原因となるため，その増加は世界的に大きな問題となっている。脂肪組織には脂肪滴を含hた実質細胞である成熟脂肪細胞に加え，脂肪前駆細胞?上皮細胞?線維芽細胞?免疫細胞といった間質細胞が存在し，それらの相互作用によって組織の恒常性が維持されていると考えられている。肥満では脂肪の過剰蓄積による脂肪細胞の肥大化とともに血管新生，マクロファージやリンパ球を中心とする免疫細胞の浸潤，間質の線維化，アディポカイン産生調節の破綻のようなダイナミックな変化が認められる。肥満は代謝性疾患としてだけではなぐ全身性に軽微な炎症が遷延する慢性炎症という概念で捉えられるようになり，また分子機構に関する研究も著しく進歩してきている。本稿では肥満による脂肪組織の炎症とそれに関わる細胞の役割について，自然免疫と獲得免疫に分けて述べる。