リン酸カルシウムセメントを使用した抗菌薬徐放システム

摘要

慢性骨髄炎は整形外科疾患の中で現在でも治療に苦労する疾患の1つである．慢性骨髄炎の治療では，壊死に陥った組織の外科的デブリドマンと抗菌薬の長期間にわたる静脈内投与が推奨されている．しかし，細菌に感染した組織は血流が乏しいため，外科的デブリドマン後には組織内の抗菌薬濃度が十分に上昇しないことが問題とされている．そのため腐骨の除去や壊死した軟部組織の掻爬後に持続洗浄療法あるいは抗菌薬混合セメントビーズ法を行い，感染が治癒したあとに骨移植術を行うのが一般的である．当教室では，ハイドロキシアパタイトブロックを担体にした抗菌薬の薬剤徐放システム（drug delivery system）がin vitroにおいて長時間にわたり抗菌薬濃度を維持することが可能であり，また，臨床においても慢性骨髄炎に対して有効な治療の1つであるという報告を積み重ねてきた．一方，骨誘導能はもたないが骨伝導能を有したbioactiveなリン酸カルシウムセメント（CPC）が三菱ウエルファーマ社（東京都）によりバイオペックスとして発売され，骨補填剤として2001年から臨床応用されている.