5G多層セル環境における基地局位置と端末移動方向を考慮した接続セル切替方式に関する検討

摘要

5G無線アクセスネットワークにおいては，利用周波数帯や無線帯域の異なるセルによる無線システムのオーバレイ配置による多層セル構成の適用が検討されている．このような多層セル構成においては，高周波数帯を用いるスモールセルやスポットセル等の小セルの活用が通信速度，システム容量改善の鍵となる．しかし，道路や建造物等によりユーザの移動経路が限定され，一定の方向に移動を行うような実環境モデルでは，既存の電力規範に基づくセル切替方式を適用した場合に，複雑化した電波伝搬環境によりユーザの移動方向とは反対方向に存在するセルに接続する状況が発生する．これによりユーザの移動に伴う通信品質の劣化に起因してセル切替（ハンドオーバ）頻度が増加し，通信品質の不安定化を招く可能性がある．そこで本稿ではこの課題を解決し，高周波数帯を用いるセルの能力を十分に活用するために，ユーザの移動方向とセルの置局位置との相対関係を考慮した接続セル切替方式を考案し，実際の大都市を模擬した計算機シミュレーションによる特性評価を行ったので報告する．