水素チャージした焼入れ焼戻しマルテンサイト鋼の疲労挙動に及ぼす繰返し速度の影響

摘要

焼入れ焼戻しをした高炭素クロム軸受用鋼（焼戻し温度823K、硬さHV366）を用いて，疲労挙動に及ぼす水素の影響を調べた結果，以下の結論が得られた。 (1)き裂発生部は,主に材料表面の微小欠陥であった．き裂発生に要する繰返し数は，微小欠陥の大きさや形状の影響を強く受けるため、本実験においては、き裂発生に及ぼす水素の影響は不明である。 （2）き裂伝ばに関しては、水素チャージ材は、未チャージ材と比較してき裂伝ぱ速度が大きい。（3）水素チャージ材のき裂は，未チャージ材よりも除荷状態でのき裂の開口量が小さい．これは，水素チャージ材では，すべり帯がき裂先端近傍のみに集中し，き裂先端部の塑性変形が局在化したためと考えられる。