切欠きの開き角の影響を考慮した切欠き寸法の全範囲に対して有効な応力集中係数の計算式

摘要

円周切欠きを有する丸棒(Fig.1）はしばしば試験片として用いられ，その応力集中問題は材料強度に関する研究において重要である．著者らはすでに切欠きの開き角ω＝60°の場合に対して切欠き半径ρが極端に大きい円弧切欠き，ならびに切欠き半径ρが極端に小さい60。 V形切欠きをも含めた，切欠き形状の全範囲に対して正確な応力集中係数を与える高精度の計算式を提案した．しかし，さきの研究では開き角ω＝60°と一定としたので，切欠きの開き角を変えたとき応力集中係数がどのように変化するかは不明である．これまでの研究として，菊川·佐藤はFig.1でa/ρ＝1，2，4の場合について切欠き底にひずみゲージをはり側面角と切欠き深さを変えて応力集中係数を考察している．また，西谷らは体積力法によってFig.1で，2t/D→0，t/ρ＝1，2，4，8に相当する半無限板のV形切欠きの応力集中係数に及ぼす開き角の影響を調べている．さらに，村上，野田，西谷はV形切欠きを有する丸棒の曲げ（Fig.1で0.5≧2ρ/D≧0.05のとき）について，切欠きの開き角の変化が応力集中係数および応力分布へ及ぼす影響について考察している．このようにいくつか研究はあるものの，実際には切欠きの開き角の応力集中係数に及ぼす影響は切欠きの鋭さや切欠き深さによって変化する．すなわち，上記の研究はいずれも切欠き寸法の一部について調べられたものであるため，切欠き寸法のすべての範囲について有効な考察とはなっていない．