消化器癌に対する化学療法　膵癌に対する化学療法

摘要

膵癌は最も予後不良な疾患の一つである。 日本膵臓学会膵癌登録の報告によれば，外科切除後の5年生存率はわずか13％である。 ほとhどの膵癌患者は転移巣を合併するか手術不能例である。 新規抗癌剤gem－citabine（GEM）の臨床使用が可能となり，5－fluorouracil（5－FU）に代わり標準的治療薬となった。 GEMは症状緩和効果，生存率改善においてその有用性が証明され，様々な臨床研究が進められている。 しかしながら，GEM単独療法の結果を凌駕する多剤併用療法の結果はいまだ示されていない。 同様に外科切除後にGEMを用いる補助療法の研究が現在進められている。 局所進行膵癌に対しては，5－FUを併用した放射線化学療法が局所病変のコントロールと予後を改善している。 この放射線化学療法施行後にGEMによる化学療法を追加するレジメを作成し，現在治療効果を検討している。 このレジメでは治療成績を改善できる傾向が示されており，治療により腫瘍が縮小し切除可能となった症例を経験した。 膵癌細胞株のGEMに対する感受性を調べ，さらにマイクロアレイを用いて遺伝子発現パターンを解析している。 感受性を規定する遺伝子が明らかとなり，テーラーメード療法へ向けての臨床研究を進めている。