術前化学放射線療法が著効したS状結腸癌直腸浸潤の1治験例

摘要

症例は56歳，男性。 食思不振，体重減少にて近医受診し，貧血を指摘され当院へ紹介入院となった。 精査にてS状結腸癌による上部直腸および前立腺浸潤を認め，臨床病期Stage IIIa（SI，N0，P0，H0，M（－））と診断した。 S状結腸·直腸療を認め，蛋白漏出による低アルブミン血症を併存し低栄養状態のため根治切除は困難と判断し，人工肛門造設術を行った。 その後，放射線化学療法を行い全骨盤脛に1．8Gy（総線量39．6Gy）と5－FU500mg（24時間持続静注）を週5日間計22回行った。 腫瘍縮小効果は得られたが前立腺浸潤の残存が疑われ，FOLFOX4療法（3コス）の追加投与を行った後，CT検査で切除可能と判断し低位前方切除術を行った。 摘除標本は病理組織学検査において癌の遠残はなく，組織学的にCRで，根治切除術された。 遠隔転移のない高度進行直腸癌における根治手術困難例に対して，術前化学放射線療法は有効な補助療法となる可能性が示唆された。