長期間（3年半）にわたり胃癌の形態変化を観察し得た1例

摘要

症例は60歳，男性。 主訴は胃部不快感。 全身倦怠感にて当院内科受診。 上部消化管内視鏡検査にて胃角部に活動性潰瘍を認めた。 抗潰瘍薬投与1か月後，潰瘍に治癒傾向はあるものの，無構造な局面と不整な隆起局面が存在。 生検組織から申分化型管状腺病が認められた。 患者側の社会的背景も手伝って手術拒否。 途中からS－1内服開始。 その後半年ごとに経過観察実施。 外来担当医による精力的な説得も虚しく3年が経過。 当初0-IIcが浸潤潰瘍型に変化し，初回診断から3年半経過し手術は実施されたが，T3（SE）H0P1M0，Stage IV。 S－1は胃癌治療における第一選択となる薬剤ではあるが，早期胃癌の状況下での安易な選択は厳に戒めなければならかい。 また，経過観察中に効果なき場合は他の薬剤に積極的に切り替えることも必要である。 本症例のような臨床経過にて胃癌の形態変化を長期間観察し得たのはまれと考えられ，報告する。