胆石ィレウス術後に胆囊十二指腸瘻を介して十二指腸浸潤を来した胆囊癌の1例

摘要

症例は75歳，女性。8年前に他院にて腸石ィレウスの診断で回腸部分切除がなされている。その際には胆囊摘出はなされていない。心窩部痛を主訴にわれわれの施設を受診。上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部前壁に数mm大のカルチノィドおよび球部頭側に異型上皮を指摘され，幽門側胃切除および胆囊摘出術を施行した。病理組織検査では胆囊癌が胆囊十二指腸瘻内を上皮内進展している像を認め，その口側に十二指腸カルチノイドを認めた。術後経過良好で退院となったが，病理組織検査の結果判明後，遺残胆囊管切除，1群リンパ節郭清を追加し，現在無再発で外来通院中である。胆道消化管瘻は放置すれば胆道が持続的に膵液に被曝することとなり，癌化の可能性が高いといわれている。本症例でも初回手術の際に胆囊摘出がなされていれば，今回の胆囊癌は防げた可能性が高い。胆囊消化管瘻の存在が疑われた場合には胆囊摘出を確実に行うことが重要である。