肝?胆?膵癌: 外科切除におけるSurgical Margin, R0 ? R1の臨床的課題: 総括

摘要

肝胆膵癌の外科切除におけるsurgical marginの最近の話題. 固形癌の外科治療において，外科切除マージンは古くより外科手技において極めて重要なポイントであることが広く言及されてきたが，癌腫の種類によってはその意義，すなわちsurgicalmarginの臨床的意義，予後に与える影響について若干差異がみられてきているのが現状である。それは様々な固形癌における生物学的悪性度の違い，癌の進展様式の違いにより外科手術におけるsurgical marginの影響に違いがでてくるのはある意味当然とも考えられる。また，さらに術後のadjuvant therapyの発達によって効果の高いadjuvant therapyが近年開発されてきたがために，surgical marginの予後に与える影響が一部の癌腫ではキャンセルされてきているとも考え得る。乳癌の外科手術の役割がそのよい例であろう。しかし肝胆膵癌の多くでは，しばしばその癌腫の進行速度および診断困難性のために診断時点で，多くの患者が切除不能あるいは切除困難な状態であることが多いのが特徴である。また，肝胆膵癌の解剖学的特異性からみて臓器とその脈管とが複雑な関係となっている部位が多く，そのことが外科切除の困難性の主たる要因なことが少なくないのも特徴である。しかしながら，肝胆膵癌の多くが外科切除のみが唯一の根治術であり，長期生存の可能性を得られる治療法であるということは極めて重要な点である。一方，近年ゲノム学の発展に基づいて多くの分子標的治療の開発もなされ，多くの癌腫で特に化学療法の治療成績が向上してきている.膵癌は全固形癌のなかでも最も悪性度の高い癌腫であり，たとえ外科切除し得た場合においてもその予後は他の癌腫の外科切除成績と比較して最も悪いものであることは周知のとおりであろう。このような生物学的悪性度が高いと考えられる肝胆膵癌においてのsurgical marginは，またその意義は極めて大きいのが現状であるかその臨床的意義についても近年右干の差異が認められてきている。本企画ではこの点について肝癌，胆管癌，膵癌について各々の領域ごとに最近の話題について取り上げていただいた。